「子どもの鼻づまりが以前から気になっている…」
「口呼吸をしているけれど、歯並びや顎の成長に関係するの?」
「永久歯がきれいに並ぶように、今からできることはあるのでしょうか?」
今回は、上顎の幅が狭く、永久歯が並ぶためのスペースが不足している可能性があることに加え、以前から鼻づまりが気になるとのことで、小児矯正の相談に来られた6歳のお子さんのケースをご紹介します。
お口の中の状態を確認しながら、顎の成長と歯並びの関係、鼻づまりや口呼吸との関係、そして成長期に検討できる矯正治療についてご説明しました。
患者様情報
年齢: 6歳
性別: 男性
初診時の状態



まずは、お口の中を確認し、歯並びや顎の幅、永久歯の生え替わりの状態を確認しました。
今回のお子さんは、まだ乳歯が残っている段階でしたが、上顎の歯列の幅が狭く、これから生えてくる永久歯のためのスペースが不足している可能性がありました。
診察時に確認した上顎の歯列の幅は、約35.7mmでした。
また、下顎の歯列についても、幅が狭い傾向が見られました。
永久歯は乳歯よりも大きいため、顎の大きさに対してスペースが足りないと、歯が重なって生えたり、本来の位置からずれて生えたりすることがあります。
そのため、歯並びだけでなく、上下の顎のバランスや今後の成長も考慮しながら、治療方法を検討することが大切です。
ご相談のきっかけ
今回の相談では、歯並びや顎の幅に加えて、以前から続いている鼻づまりについてもお話がありました。
鼻づまりがあると、鼻で呼吸しにくくなり、口呼吸になりやすいことがあります。
また、舌の位置や唇・頬などのお口周りの筋肉の使い方も、成長期の歯列を考えるうえで大切な要素です。
そこで今回は、鼻づまりと顎の成長の関係や、上顎を広げる治療について、保護者の方に詳しくご説明しました
患者様との実際のやり取り
鼻づまりや口呼吸は、顎の成長と関係するのでしょうか?
以前から鼻づまりがあるのですが、顎が狭いことと関係しているのでしょうか?
鼻づまりがあると、鼻で呼吸しにくくなり、口呼吸が習慣になる場合があります。
通常、舌は安静にしているときに上顎に接していることが望ましいとされています。
しかし、口呼吸が続くと、舌が下がった位置になりやすいことがあります。
舌や唇、頬などのお口周りの筋肉は、歯列や顎の成長に関わる要素の一つです。
そのため、成長期のお子さんでは、歯並びだけでなく、呼吸の状態や舌の位置にも目を向けることが大切です。
ただし、顎の幅が狭くなる原因は一つではありません。生まれ持った骨格や歯の大きさなど、さまざまな要因が関係するため、鼻づまりだけが原因と決めつけることはできません。
今回のお子さんについても、鼻づまりの原因がはっきりしていないため、必要に応じて耳鼻咽喉科で確認することも大切です。
顎を広げることで、鼻の通りもよくなる可能性はありますか?
上顎の骨は、鼻の周囲の構造とも関係しています。
そのため、適応のあるお子さんでは、上顎を広げる治療によって鼻腔の形や通気性に変化が生じ、鼻呼吸が改善する可能性があります。
ただし、鼻づまりの原因はさまざまです。鼻の中の構造や炎症などが関係している場合もあり、顎を広げる治療だけですべての鼻づまりが改善するわけではありません。
また、鼻の通りが改善する可能性があっても、睡眠の質が必ずよくなるとは限りません。
顎が狭いと、永久歯がきれいに並びにくいのでしょうか?
歯がきれいに並ぶためには、歯の大きさに見合ったスペースが必要です。
顎の幅が狭い場合、永久歯が生えてくるためのスペースが不足し、歯並びが重なってしまうことがあります。
また、上顎と下顎は、噛み合わせを通して互いに関係しています。
上顎の歯列が狭いと、上下の歯列のバランスにも影響する場合があります。
上顎だけでなく下顎の状態も確認しながら、上下の歯列のバランスを考えて治療方法を検討する必要があります。
成長期の小児矯正では、現在の歯並びだけでなく、これから生えてくる永久歯や顎の成長を見据えることが大切です。
上顎を広げる矯正装置には、どのような種類がありますか?
固定式と取り外し式では、どちらがよいのでしょうか?
装置によって特徴が異なるため、お子さんの年齢や歯の生え替わり、顎の状態、装置を管理できるかどうかなどを考慮して選択します。
① 固定式の急速拡大装置
固定式の装置は中央にあるネジを少しずつ回すことで、上顎の幅を広げることを目指します。
成長期のお子さんでは、骨の成長段階や状態によって、上顎を拡大する治療が可能な場合があります。
固定式のため、毎日装置をつけたり外したりする必要がないことがメリットです。
一方で、装置の周りに食べ物が挟まりやすくなるため、丁寧な歯磨きが必要です。
装置をつけた直後には、舌や頬に違和感が出ることもあります。
② 取り外し式の装置
取り外し式の装置は、食事や歯磨きの際に外せることが特徴です。
お口の中を清掃しやすい一方で、決められた時間に装着する必要があります。
装着時間が不足すると、計画どおりに治療が進まない可能性があります。また、外した装置を紛失しないように管理することも大切です。
どちらの装置が適しているかは、お子さんの状態や治療の目的によって異なります。
もう少し永久歯が生えてから治療を始めることもできますか?
小児矯正では、装置の種類やお口の状態によって、治療を開始する時期が異なります。
今回ご説明した固定式の急速拡大装置は、精密検査で適応が確認できれば、現在の年齢から治療を検討できる方法です。
一方で、ほかの装置では、永久歯の生え替わりを待ってから開始する場合もあります。
成長期は顎の発育を利用した治療を検討できる時期ですが、早く始めれば必ずよいというわけではありません。
現在の顎の状態や歯の生え替わり、治療の目的などを確認し、適切な開始時期を判断する必要があります。
今回の場合、顎の幅や年齢を考慮し、固定式の急速拡大装置を中心に治療を検討することをご提案します。
急速拡大装置を使うと、痛みはありますか?
ネジを回すと痛みが出るのでしょうか?
急速拡大装置は、ネジを回して上顎を広げていくため、締め付けられるような感覚や圧迫感が生じることがあります。
痛みの感じ方には個人差があります。
痛みが強い場合には、無理に進めず、歯科医師に相談することが大切です。
ネジを回す頻度についても、自己判断で変更せず、歯科医師の指示に従って調整します。
装置を装着した直後は、舌や頬に違和感が出ることもあります。
お子さんの様子を確認しながら、無理なく治療を進めていきます。
装置をつけたまま、サッカーや水泳などのスポーツを続けることはできますか?
固定式の装置は、基本的に装着した状態で日常生活を送ります。
装置に慣れるまでは、食事や発音などで違和感が出る場合がありますが、徐々に慣れていくこともあります。
ただし、スポーツの種類や装置の状態によって注意点が異なる場合があります。
顎を広げる治療が終わったら、それで矯正治療も終わりですか?
急速拡大装置による治療では、ネジを回して顎を広げる期間と、広げた状態を安定させるための期間があります。
今回の場合、拡大に約2〜3か月、その後、広げた状態を維持する期間として約2〜3か月を見込みます。
その後は、歯列や歯の生え替わりの状態を確認しながら、必要に応じて次の治療を検討します。
上顎を広げることで、下顎の歯列にも変化が見られる場合がありますが、必ずしも下顎が十分に広がるとは限りません。
そのため、下顎の状態も確認し、必要に応じて追加の治療を検討します。
また、舌の位置やお口周りの筋肉の使い方も大切です。状態によっては、舌や口周りの筋肉のトレーニングを目的とした装置などを使用する場合もあります。
実際の治療内容や期間は、お子さんの成長や歯の生え替わりによって変わります。
小児矯正をすれば、大人になってからの矯正は必要なくなりますか?
今のうちに矯正をしておけば、大人になってから矯正をしなくてもよいのでしょうか?
小児矯正では、成長期を利用して顎の幅や歯列の土台を整えることを目指します。
その結果、永久歯が並ぶスペースを確保しやすくなったり、将来の矯正治療の選択肢が広がったりする可能性があります。
ただし、小児矯正を行えば、必ず大人になってからの矯正治療が不要になるわけではありません。
顎の成長や永久歯の生え替わりが進むにつれて、噛み合わせや歯並びが変化することがあります。
そのため、小児矯正が終わった後も、永久歯が生えそろうまで定期的に経過を確認することが大切です。
将来的に追加の矯正治療が必要になるかどうかは、成長や歯並びの状態を見ながら判断していきます。
今回の治療方針
今回のお子さんについては、上顎の幅が狭く、永久歯が並ぶためのスペースが不足している可能性があることから、成長期を利用した上顎の拡大を中心に治療を検討しました。
特に、固定式の急速拡大装置について詳しくご説明しました。
保護者の方からは、装置を取り外す必要がなく、紛失や装着忘れの心配が少ないことから、固定式の装置を希望されるお話がありました。
今後は、精密検査によって歯並びや顎の状態を詳しく確認し、実際に治療が適しているかどうかを判断していきます。
治療を進める場合は、主に次の点を確認していきます。
① 上顎の幅を広げる
顎の状態や成長段階を確認し、適応があれば急速拡大装置によって上顎の拡大を目指します。
② 永久歯が並ぶスペースを確保する
歯の生え替わりを確認しながら、永久歯が適切な位置に生えてくるためのスペースを整えていきます。
③ 鼻づまりや口呼吸にも目を向ける
鼻づまりの原因を必要に応じて耳鼻咽喉科で確認するとともに、舌の位置や口呼吸の状態にも目を向けていきます。
④ 成長に合わせて経過を確認する
顎の成長や永久歯の生え替わりを定期的に確認し、必要に応じて治療方針を調整していきます。
まとめ
今回は、鼻づまりが以前から気になっている6歳のお子さんの小児矯正相談についてご紹介しました。
お口の中を確認すると、上顎の幅が狭く、これから生えてくる永久歯が並ぶためのスペースが不足している可能性がありました。
小児矯正では、現在の歯並びだけでなく、成長期を利用して顎の土台を整え、永久歯が並びやすい環境をつくることも大切です。
また、鼻づまりや口呼吸、舌の位置なども、お口の機能を考えるうえで確認しておきたいポイントです。
ただし、顎の幅が狭い原因や鼻づまりの原因は一人ひとり異なります。矯正治療によって鼻づまりや睡眠の問題が必ず改善するわけではないため、必要に応じて耳鼻咽喉科などの医療機関と連携しながら対応することが重要です。
今回の相談では、固定式の急速拡大装置を中心に治療を検討することとなりましたが、まずは精密検査を行い、実際の歯や顎の状態を確認したうえで治療計画を決定していきます。
「子どもの鼻づまりが気になる」
「口呼吸や顎の成長について相談したい」
「永久歯がきれいに並ぶか心配」
このようなお悩みがある場合は、一度小児矯正の相談を受けてみてはいかがでしょうか。
お子さんの成長や歯の生え替わりの状態を確認しながら、一人ひとりに合った治療方法を検討していきましょう。
この記事の執筆・監修者
相生おとなこども矯正歯科 院長
村木 駿介(むらき しゅんすけ)歯科医師
院長自身も子どもの頃に受け口で矯正を受け、その後の後戻りを経験して25歳で治療をやり直しました。その経験から、歯を並べるだけでなく、上あごの成長・呼吸・舌の使い方といった原因から考える矯正に取り組んでいます。徳島大学卒業後、医療法人社団翔志会 たけち歯科クリニック(マウスピース矯正京都総合クリニック/インプラントセンター京都)に勤務し、ベトナムでの小児歯科ボランティアも経験。現在は兵庫県相生市で、小児から成人までの矯正治療にあたっています。
- 日本顎咬合学会 会員/TDC・GPO 会員
- GPO矯正セミナー レギュラー・アドバンス・小児コース修了
- 顎顔面矯正セミナー修了/OMT小児矯正セミナー アドバンスコース修了
本記事は、相生おとなこども矯正歯科 院長・村木駿介(歯科医師)が執筆・監修しています。内容は診療ガイドラインや学会発表、記事内に記載の参考文献をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は自己判断せず、歯科医院にご相談ください。

