「今はまだ乳歯なのに、歯と歯の間に隙間がない」
「これから永久歯が生えてきたら、歯が重なってしまわないか心配」
「顎が小さいと言われたけど、今から何かできることはある?」
今回は、乳歯の段階ですでに歯が並ぶスペースが少なく将来的な歯並びを心配されてご相談に来られたケースをご紹介します。
お口の中を確認すると、特に上顎の横幅が狭く、永久歯が生ええてくるためのスペースが不足している状態でした。
また、花粉症による鼻づまりから口呼吸になりやすいことも分かりました。
今回は、現在の歯並びや顎の幅だけではなく、舌の位置や呼吸の状態にも注意しながら今後の小児矯正についてご説明しました。
患者様情報
年齢: 7歳
性別: 女性
初診時の状態



お口の中とレントゲンを確認すると、乳歯の段階ですでに歯と歯の間に十分な隙間がなく、永久歯が生えてくるためのスペースが不足している状態でした。
特に上顎の横幅が狭く、上顎臼歯間隔は約35mmでした。
7~8歳頃の一般的な目安と比較としても狭く、今後永久歯への生え変わりが進むと、歯が重なって生えてくる可能性が考えられます。
また、上顎の幅が狭いことで下顎もそれに合わせるように内側に収まり、歯列全体が狭くなっている状態がみられました。
ご相談のきっかけ
ご家族は、
- 乳歯なのに歯と歯の間に隙間がない
- 永久歯が生えてきたら、歯がガタガタにならないか心配
- できれば子どものうちに歯並びを整えておきたい
といった点でした。
お子さんには花粉症があり、毎年2月頃から鼻水・鼻づまりが出始めるとのことでした。
鼻が詰まることで口呼吸になってしまうことが多く、
「口呼吸も歯並びに関係するのでしょうか?」
という点についてもご質問がありました。
患者様との実際のやり取り
今は乳歯ですが、歯の隙間がないのが気になります。
実際にお口の中を見ると、乳歯の段階で隙間がないですね。現在のスペースのまま生え替わりが進むと、永久歯がきれいに並ぶための場所が不足し歯が重なって生えてくる可能性があります。
他の歯科医院でも、顎が小さいと言われたことがあります。
今回の状態では、特に上顎の横幅が狭いことが大きなポイントです。
上顎の幅が狭いと下顎もそれに合わせるように内側へ収まり、上下の歯列が狭くなることがあります。
そのため、単純に「歯を並べる」のではなく、成長期を利用して歯が並ぶための土台を整えていくことが重要です。
どうして上顎が狭くなったのですか?
遺伝が関係ありますか?
遺伝的な要素もありますが、それだけではありません。
舌の位置や唇・頬の筋肉、そして呼吸の仕方など日常的な習慣も顎の成長に関係しています。
特に舌は、普段リラックスしているときに上顎に接していることが重要です。
舌が上顎に適切に位置することで、上顎の成長を支える力が働きます。
花粉症で鼻が詰まることも関係していますか?
鼻が詰まっていると、無意識に口で呼吸するようになります。
口呼吸が続くと、舌が本来の位置より下がった状態になりやすく、上顎の成長を十分に促せない可能性があります。
そのため、歯並びだけを治療するのではなく、「鼻で呼吸できる状態を作ること」も大切です。
矯正装置で歯列を広げても、口呼吸が続いて舌の位置が改善されなければ、治療効果が十分に得られなかったり、治療後に歯並びが戻ってしまったりする可能性があります。
先に鼻の治療をしたほうがいいのでしょうか?
矯正治療と並行して、鼻の通りを改善していくことをお勧めします。
アレルギー性鼻炎がある場合には、耳鼻咽喉科で相談し必要に応じてアレルギー治療を行うことが大切です。
治療方法の一つとして、舌下免疫療法について相談することも選択肢になります。
開始時期についてはアレルギーの状態や治療内容によって異なるため、アレルギー専門の医療機関で相談していただくことになります。
いつ頃から始めるべきですか?
今すぐ顎を広げる治療を始めるのですか?
本格的な拡大治療については、永久歯の生え替わりの状態を確認しながら開始時期を決めていきます。
本格的な矯正治療に向けた準備期間として、舌や唇などお口周りの筋肉を正しく使えるようにすることを目的として取り外し式の装置(マウスピース型の機能性矯正装置)を使用します。
舌の位置や口周りの筋肉の使い方を整え、できるだけ鼻呼吸をしやすい環境を作ることが大切です。
本格的な矯正では、どのような装置を使いますか?
上の前から2番目の永久歯が生えそろった段階で、お口の中の状態を確認し本格的な拡大治療に進みます。
その際には、
・取り外し式の矯正装置
・固定式の矯正装置
などの選択肢から、合った方法を検討します。
取り外し式の矯正装置は、見た目が目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外せるメリットがありますが一方で、1日22時間程度の装着が必要となるため、ご本人による装着時間の管理が必要です。
固定式の装置は、装着時間を管理する必要がないことがメリットですが、装置の周囲に汚れが残りやすくなるため、丁寧な歯磨きが必要になります。
子どものうちに治療するメリットはありますか?
はい。
成長期には、顎の成長を利用しながら歯が並ぶためのスペースを確保できる可能性があります。
永久歯がすべて生えそろってからスペース不足が明らかになった場合には、歯を抜いたり、歯を削ったりしてスペースを作る治療が必要になるケースもあります。
そのため成長期の
今すぐ顎を広げる治療を始めるのですか?
本格的な拡大治療については、永久歯の生え替わりの状態を確認しながら開始時期を決めていきます。
本格的な矯正治療に向けた準備期間として、舌や唇などお口周りの筋肉を正しく使えるようにすることを目的として取り外し式の装置を使用します。
舌の位置や口周りの筋肉の使い方を整え、できるだけ鼻呼吸をしやすい環境を作ることが大切です。
そのため、成長期のうちに歯列の幅を整え、永久歯が生えてくるための環境を準備しておくことには大きな意味があります。
ただし、子どもの矯正を行ったからといって、必ず大人の矯正が不要になるわけではありません。
第一段階の治療によって永久歯が並ぶ環境を整えたうえで、永久歯が生えそろった後の状態を確認し、必要に応じて第二段階の治療を検討します。
今回の治療方針
今回のケースでは、まず以下の流れで治療を進めていくことになりました。
① マウスピース型矯正装置による準備
まずは取り外し式のやわらかく痛みの少ないマウスピースタイプの矯正装置を使用し、舌や唇などのお口周りの筋肉を正しく使えるようにしていきます。
鼻呼吸を意識し、舌を正しい位置に置くことも大切です。
② 鼻呼吸の環境を整える
花粉症による鼻づまりもあるため、耳鼻咽喉科でアレルギー性鼻炎について相談します。
必要に応じて舌下免疫療法などの治療も検討します。
③ 永久歯の生え替わりを確認
上の前から2番目の永久歯が生えそろうまで、歯の生え替わりや顎の成長を経過観察します。
④ 本格的な拡大治療
永久歯の生え替わりの状態を確認したうえで、取り外し式の矯正装置または固定式装置による本格的な拡大治療を検討します。
まとめ
今回のケースでは、
・乳歯の段階ですでに歯が並ぶスペースが少なく、永久歯への生え替わりによって歯の重なりが強くなる可能性があること
・特に上顎の横幅が狭く、歯列全体のスペース不足につながっていること
・歯並びだけでなく、舌の位置や唇・頬の筋肉、呼吸の状態も顎の成長に関係していること
・花粉症による鼻づまりから口呼吸になっている場合、鼻呼吸を改善することも矯正治療を進めるうえで重要であること
・まずはマウスピース型の矯正装置を使用して、お口周りの機能を整えること
・永久歯の状態を確認しながら、本格的な顎の拡大治療の方法を決定すること
をご説明しました。
この記事の執筆・監修者
相生おとなこども矯正歯科 院長
村木 駿介(むらき しゅんすけ)歯科医師
院長自身も子どもの頃に受け口で矯正を受け、その後の後戻りを経験して25歳で治療をやり直しました。その経験から、歯を並べるだけでなく、上あごの成長・呼吸・舌の使い方といった原因から考える矯正に取り組んでいます。徳島大学卒業後、医療法人社団翔志会 たけち歯科クリニック(マウスピース矯正京都総合クリニック/インプラントセンター京都)に勤務し、ベトナムでの小児歯科ボランティアも経験。現在は兵庫県相生市で、小児から成人までの矯正治療にあたっています。
- 日本顎咬合学会 会員/TDC・GPO 会員
- GPO矯正セミナー レギュラー・アドバンス・小児コース修了
- 顎顔面矯正セミナー修了/OMT小児矯正セミナー アドバンスコース修了
本記事は、相生おとなこども矯正歯科 院長・村木駿介(歯科医師)が執筆・監修しています。内容は診療ガイドラインや学会発表、記事内に記載の参考文献をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は自己判断せず、歯科医院にご相談ください。
