「上の前歯が出ているのが気になる…」
「笑ったときに歯茎が大きく見えるのを改善したい…」
「矯正治療で口元の印象はどこまで変わるの?」
今回は、上の前歯の突出感と、笑ったときに上の歯茎が目立つことを気にされ、矯正相談に来られた成人の患者様のケースをご紹介します。
患者様は、歯並びだけでなく、笑ったときの歯茎の見え方や口元全体のバランスについても気にされていました。
また、歯を食いしばる癖や顎周辺の痛み、以前から続く鼻づまりや口呼吸についてもご相談がありました。
そこで今回は、お口の中や噛み合わせの状態を確認しながら、矯正治療で改善できることや、治療を始める前に知っておきたいことについてご説明しました。
患者様情報
年齢: 24歳
性別: 女性
初診時の状態



今回の患者様のお口の中を確認すると、奥歯の噛み合わせには大きな問題は見られませんでした。
一方で、上の前歯がやや前方に傾いており、上下の前歯の前後的な位置関係にも差が見られました。
上下の前歯の前後的な距離である「オーバージェット」は約4〜5mmでした。一般的には約2mmが一つの目安となりますが、適切な数値は歯並びや骨格などによって異なります。
また、笑ったときには上の歯茎が約5mm見える状態でした。
このような歯の位置や歯茎の見え方が、患者様の気にされていた口元の印象につながっている可能性があります。
ただし、笑ったときの歯茎の見え方は、歯の位置だけで決まるわけではありません。上顎の骨格や歯茎の状態、上唇の動きなども関係するため、それぞれの状態を考慮して治療方法を検討する必要があります。
ご相談のきっかけ
今回、患者様からは、主に次のようなお悩みをお伺いしました。
- 上の前歯が前に出ているのが気になる
- 笑ったときに上の歯茎が目立つ
- 歯を食いしばる癖や顎周辺の痛みが気になる
- 昔から鼻づまりがあり、口呼吸になりやすい
特に気にされていたのは、笑ったときの歯茎の見え方と、上の前歯の突出感でした。
そこで、歯並びを整えることでどこまで改善を目指せるのか、また、歯を抜く必要があるのかなど、治療方法について詳しくご説明しました。
患者様との実際のやり取り
笑ったときに歯茎が目立つのは、矯正治療で改善できますか?
笑った時に歯茎が目立つのが気になります。
矯正治療で目立たなくなりますか?
笑ったときに上の歯茎が目立つ状態は、一般的に「ガミースマイル」と呼ばれます。
ガミースマイルには、いくつかの原因があります。
例えば、
・上の前歯の位置や傾き
・上顎の骨格的な特徴
・歯茎の形や見える範囲
・笑ったときの上唇の動き
などです。
そのため、歯並びを整えることで歯茎の見え方が改善する場合もあれば、歯以外の要因が大きく関係している場合もあります。
今回の場合、上の前歯を上方向に動かす「圧下」という方法によって、笑ったときの歯茎の見え方を改善できる可能性があります。
ただし、実際にどこまで改善できるかは、歯の根の周囲にある骨の状態などによって異なります。
矯正治療だけですべてのお悩みを解決できるとは限らないため、検査結果をもとに、改善できる範囲を慎重に判断します。
歯を上に動かすと、歯茎の見え方はどれくらい変わりますか?
歯を上方向に動かせる量には限界があり、骨の状態などによって実際に動かせる範囲が変わります。
現時点での見通しとしては、条件が整えば、前歯を1〜2mm程度圧下できる可能性があります。また、必要に応じて歯茎の形を整える処置を組み合わせる方法も考えられます。
ただし、これらはあくまで現時点での目安です。
実際にどの程度歯を動かせるか、歯茎の見え方がどれほど変化するかは、詳しい検査を行ったうえで判断する必要があります。
歯茎の見え方には、上唇の動きや骨格なども関係します。そのため、矯正治療によって改善を目指すことはできますが、歯茎がまったく見えなくなることを保証するものではありません。
ガミースマイルを改善するには、矯正治療以外にも方法はありますか?
ガミースマイルは、原因によって適した治療方法が異なります。
歯の位置が関係している場合には、矯正治療によって改善を目指すことがあります。
一方で、歯茎の形や上唇の動き、上顎の骨格などが大きく関係している場合には、歯茎の形を整える処置や、状態によってはボツリヌストキシン製剤による治療、外科的な治療などが選択肢になることもあります。
ただし、すべての方にこれらの治療が適しているわけではありません。
まずは歯並びや骨格、歯茎、唇の動きなどを確認し、どのような要因が関係しているのかを把握することが大切です。
どんな矯正になりますか?
歯を抜かずに矯正できますか?
矯正治療では、歯を抜いてスペースを作る方法と、歯を抜かずに歯並びを整える方法があります。
どちらが適しているかは、現在の歯並びや骨格、前歯の位置、希望する口元の仕上がりなどによって異なります。
今回の場合、抜歯をすると前歯を後方へ動かしやすくなる可能性がある一方で、もともとの下顎の位置なども考慮すると、口元が下がる心配もあります。
そのため、抜歯をする方法と、抜歯をしない方法の両方を検討し、シミュレーションを比較したうえで判断させていただきます。
大切なのは、歯を抜くか抜かないかだけで判断するのではなく、噛み合わせや口元全体のバランスを考慮して治療方法を選ぶことです。
マウスピース矯正で治療できますか?
マウスピース矯正は、透明な装置を使用するため目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外せることが特徴です。
一方で、取り外しができるからこそ、決められた装着時間を守ることが重要になります。
装着時間が不足すると、計画どおりに歯が動かず、治療期間が延びる可能性があります。
また、歯の動き方や治療計画によっては、歯を動かすための補助装置を使用する場合もあります。
今回のように前歯を上方向に動かす治療では、必要に応じて「アンカースクリュー」と呼ばれる小さなネジ状の装置を使用することも検討します。
ただし、装置を使用するかどうかは、検査結果や治療計画を踏まえて判断します。
治療期間はどれくらいかかりますか?
マウスピース矯正の治療期間について、約1年半が一つの目安になります。
ただし、実際の治療期間は、歯の動き方や装置の装着状況、治療計画などによって異なります。
装着時間が不足した場合などには、治療期間が2〜3年程度に延びる可能性もあります。
また、治療中は定期的に通院し、歯の動きや噛み合わせを確認する必要があります。
治療開始当初は月に1回程度、その後は状態に応じて2〜3か月に1回程度の通院を想定しています。
他に改善することはありますか?
食いしばりや顎の痛みも、矯正治療で改善できますか?
食いしばりや顎の痛みにはさまざまな要因があり、矯正治療によって必ず改善するとは限りません。
食いしばりは、歯や顎周辺の筋肉に負担をかけることがあります。また、顎関節や周囲の筋肉の状態によっては、痛みや違和感が生じる場合もあります。
そのため、歯並びの治療とは分けて、顎関節や筋肉の状態などを必要に応じて確認し、症状に合った対応を検討することが大切です。
また、子どもの頃から鼻づまりがあり、口呼吸になりやすいとのことですが、歯並びだけで原因を判断することはできません。症状が続いている場合には、必要に応じて耳鼻咽喉科などで相談することも選択肢になります。
今回の治療方針
今回の患者様については、まず詳しい矯正検査を行い、歯並びや噛み合わせ、骨格などを確認したうえで治療計画を立てていくことが大切です。
そのうえで、次の点を中心に治療方法を検討します。
① 上の前歯の位置を整える
上の前歯の傾きや位置を確認し、口元の突出感の改善を目指します。
② 歯茎の見え方を考慮する
前歯の圧下によって、笑ったときの歯茎の見え方をどこまで改善できるかを検討します。
歯茎の形や骨格、唇の動きなども関係するため、矯正治療だけで改善できる範囲を確認することが重要です。
③ 抜歯・非抜歯のシミュレーションを比較する
抜歯をする場合としない場合の治療計画を比較し、歯並びや口元全体のバランスを考慮して検討します。
④ マウスピース矯正の適応を確認する
歯の動き方や必要な補助装置などを確認し、マウスピース矯正が適しているかを判断します。
⑤ 生活スタイルに合わせて通院計画を考える
患者様は今後、京都への転居を予定されていました。
矯正治療は定期的な通院が必要になるため、転居後の生活や通院のしやすさも含めて、無理なく治療を続けられる環境を考えることが大切です。
治療を始める前に、通院先や通院頻度についても十分に検討していきます。
まとめ
今回の患者様は、上の前歯の突出感と、笑ったときに上の歯茎が目立つことを主なお悩みとして、矯正相談に来られました。
お口の中を確認すると、上の前歯がやや前方に傾いており、笑ったときには上の歯茎が見えやすい状態でした。
矯正治療では、歯の位置を調整することで、口元や歯茎の見え方が変化する可能性があります。
ただし、ガミースマイルには歯の位置だけでなく、骨格や歯茎、唇の動きなども関係しています。そのため、矯正治療によってどこまで改善できるかを事前に確認することが大切です。
また、抜歯をするかどうかによっても、口元の仕上がりが変わる可能性があります。シミュレーションなどを活用し、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで治療方法を選ぶことが重要です。
「上の前歯が出ているのが気になる」
「笑ったときに歯茎が目立つのを改善したい」
「矯正治療で口元がどのくらい変わるのか知りたい」
このようなお悩みがある方は、まずは矯正相談でご自身のお口の状態を確認してみてはいかがでしょうか。
歯並びだけでなく、噛み合わせや骨格、歯茎の見え方なども含めて確認し、ご自身に合った治療方法を検討していきます。
この記事の執筆・監修者
相生おとなこども矯正歯科 院長
村木 駿介(むらき しゅんすけ)歯科医師
院長自身も子どもの頃に受け口で矯正を受け、その後の後戻りを経験して25歳で治療をやり直しました。その経験から、歯を並べるだけでなく、上あごの成長・呼吸・舌の使い方といった原因から考える矯正に取り組んでいます。徳島大学卒業後、医療法人社団翔志会 たけち歯科クリニック(マウスピース矯正京都総合クリニック/インプラントセンター京都)に勤務し、ベトナムでの小児歯科ボランティアも経験。現在は兵庫県相生市で、小児から成人までの矯正治療にあたっています。
- 日本顎咬合学会 会員/TDC・GPO 会員
- GPO矯正セミナー レギュラー・アドバンス・小児コース修了
- 顎顔面矯正セミナー修了/OMT小児矯正セミナー アドバンスコース修了
本記事は、相生おとなこども矯正歯科 院長・村木駿介(歯科医師)が執筆・監修しています。内容は診療ガイドラインや学会発表、記事内に記載の参考文献をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は自己判断せず、歯科医院にご相談ください。


