「前歯が引っかかっている。様子見でいいのか心配…」――そんなお悩みを抱える保護者の方は少なくありません。
前歯の噛み合わせに引っかかりがある状態は、放置すると上あごの成長が妨げられ、歯ならびの悪化・顔立ちへの影響・小児睡眠時無呼吸症候群のリスク上昇など、全身への影響にまで及ぶことがあります。
本記事では、7歳男の子の実際の症例をもとに、治療前の状態・バイオブロックによる治療経過・治療後の変化をわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
- 前歯の引っかかりを放置するリスク
- 治療前の診断内容(上あごの狭さ・交叉咬合)
- バイオブロックの仕組みと治療の流れ
- 8ヶ月の治療経過と治療後の状態
- 治療後の経過観察で大切なこと

7歳男の子の治療前(上)と8ヶ月後(下)の比較。前歯の歯ならびが大きく改善しています。
治療前の状態|「前歯が引っかかっている。様子見でいいのか心配」

治療前の口腔内。右上の前歯が内側に入り、右の前歯が逆の噛み合わせ(交叉咬合)になっています。
初診時の診断では、次のような状態が確認されました。
🔍 治療前の診断内容
- 右上の前歯が内側に入っている(歯列内に収まっていない)
- 右の前歯が逆の噛み合わせ(交叉咬合)になっている
- 下あごもやや狭く、歯が内側に倒れている
お母さんのお悩みは「前歯が引っかかっている。様子見していいのか心配」というものでした。この「引っかかり」を放置した場合のリスクについて、次のセクションで解説します。
放置するとどうなる?上あごの成長と全身への影響

前歯の引っかかりが上あごの正しい成長を妨げ、歯ならび・顔立ち・睡眠・姿勢にまで影響します。
前歯が引っかかった状態のままだと、上あごの骨がうまく成長できなくなります。上あごは前方・横方向へ成長することで、歯が並ぶスペースや鼻腔の広さを確保しますが、引っかかりがあるとその成長が妨げられます。
⚠️ 放置した場合に起こりうること
- 歯ならびのさらなる悪化
- 顔立ち(輪郭・鼻まわり)への悪影響
- 小児睡眠時無呼吸症候群(OSA)のリスク上昇
- 発音への影響
- 姿勢の悪化(前方頭位など)
上あごの骨は7〜9歳ごろをピークに成長します。この時期に引っかかりを解消し、上あごが正しい方向へ成長できる環境をつくることが非常に重要です。
治療内容|バイオブロックで上あごを横・前方向に広げる

バイオブロックで内側に入った前歯を前方へ押し出しながら、上あご全体を横・前方向に拡大します。
この症例では、バイオブロックという装置を使用しました。バイオブロックは上あごに固定するタイプの拡大装置で、次のようなアプローチを同時に行います。
| アプローチ | 内容・目的 |
|---|---|
| 前歯の押し出し | 内側に入った右上の前歯を前方へ移動し、引っかかりを解消 |
| 横方向への拡大 | 上あごを横に広げ、歯が並ぶスペースと鼻腔を確保 |
| 前方向への拡大 | 上あご全体を前方向へ成長誘導し、噛み合わせを改善 |
💡 装置の装着について
- 顎を広げる装置の装着期間:5ヶ月
- 1日の装着時間:歯磨きの時以外(ほぼ終日)
- 装置は自分で取り外し可能
治療後の状態|前歯の引っかかりが取れ、顎の骨が成長しやすくなった

治療後。前歯の引っかかりが解消され、前歯が揃っています。顎の骨が成長しやすい環境が整いました。
治療後は、前歯の引っかかりが解消され、前歯が揃った状態になっています。上あごが正しい方向へ成長できる環境が整ったことで、今後の永久歯への生え変わりもスムーズに進みやすくなります。
治療完了後は、以下の点を継続的に経過観察しています。
- 歯ならびが崩れていないか
- お口周りの筋肉・舌が上手く使えているか
- 歯磨きがうまくできているか
- 虫歯や歯肉炎になっていないか
- 正しい食生活ができているか
矯正治療は装置が外れたら終わりではありません。成長期のお子さんは定期的な経過観察が、長期的な歯の健康を守ることにつながります。
まとめ|「知らなかった」という後悔をなくすために

すべてのお子さんに治療が必要なわけではありません。ただ、「知らなかった」という後悔はあとから取り戻せません。
「すべてのお子さんに治療が必要なわけではありません」
しかし、「知らなかった」「もっと早く相談していれば」という後悔は、あとから取り戻すことができません。
「前歯が少し引っかかっている気がする」「様子見でいいのか迷っている」――そんなときこそ、早めにご相談ください。相生おとなこども矯正歯科では、成長段階・あごの状態・歯ならびの原因を丁寧に診断し、本当に必要な治療だけをご提案しています。
初診相談は無料です。公式LINE・DMでのご相談もお気軽にどうぞ。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 前歯の引っかかりは自然に治りますか?
A. 乳歯の時期であれば自然に改善するケースもあります。しかし永久歯が生えてきても引っかかりや交叉咬合が残っている場合は、自然には治りにくいことがほとんどです。上あごの成長ピーク(7〜9歳)を逃さないためにも、早めの診断をおすすめします。
Q. バイオブロックは痛いですか?
A. 装置をつけ始めた直後は違和感や軽い痛みを感じることがありますが、多くのお子さんは数日で慣れます。シリコン系の素材を使用しており、金属ブラケットと比べてお子さんへの負担は少ない装置です。
Q. 治療が終わったら通院しなくていいですか?
A. 治療完了後も定期的な経過観察が大切です。成長期のお子さんは永久歯への生え変わりに伴い歯ならびが変化することがあります。筋肉のバランス・虫歯・歯肉炎のチェックも含め、継続的に見守っていきます。
Q. 相生市以外からでも受診できますか?
A. はい、たつの市・赤穂市・姫路市方面など近隣からも多くの方にご来院いただいています。初診相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- Proffit WR, Fields HW, Sarver DM. Contemporary Orthodontics. 6th ed. Elsevier; 2018.
- McNamara JA. “Maxillary transverse deficiency.” Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2000;117(5):567–570.
- Villa MP, et al. “Effects of rapid maxillary expansion on airway volume and sleep parameters in children.” Pediatr Pulmonol. 2024;59(2):310–322.
- Baccetti T, et al. “Early dentofacial features of Class III malocclusion: a longitudinal study from the deciduous through the mixed dentition.” Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1997;111(5):502–509.
- Turley PK. “Treatment of the Class III malocclusion with maxillary expansion and protraction.” Semin Orthod. 2007;13(3):143–157.
執筆・監修
村木 駿介(むらき しゅんすけ) 歯科医師
相生おとなこども矯正歯科 院長 / 顎咬合学会会員
兵庫県相生市にて、小児から成人まで成長を考慮した矯正治療を提供。バイオブロック・上顎拡大など成長期の矯正を専門的に行っている。